ネットワーク社会学

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長
公文俊平



「ということで、情報の生産力というものが、とくに新しいインスティテュー ションを市民がつくりうる可能性が出てきた。それから、いままでよりははるか に、いわゆる自己充足的な方向へ行動できる可能性が増えているということに、 何か1つのよりどころを求めるべきではないか、ということなんです。(中略) これ[時間的価値]が人間の欲求の中心になるのではないか、という気がするん です。つまり、生活主体があって、場があって、場に働きかけて、その場を自分 を含めて望ましい状態に変えていくプロセス、それが時間的価値を生むプロセス です。手段財として、時間的価値というものが、ここに新しい可能性として出て くれば、その時間的価値を個人、集団あるいはコミュニティ、もっといえばグロー バルソサエティとして追求していくということが新しい可能性ではないかと、そ ういうふうに思うわけです。」

どうだろう。「時間的価値」の追求というといささかわかりにくいが、要するに、これからの情報社会では、生活主体としての人々が、個人としても、コミュニティとしても、さらにはグローバルな社会としても、自分たち自身の力で生活の場に働きかけて、その場(そこには自分たち自身も含まれる)の状態をより望ましい方向に変えていこうとするようになるだろうというのである。今日グローバルなレベルで起こりつつある社会変化は、まさに増田氏が予感した通りのものだといえよう。私は、悲観論がいたるところに弥漫していた1970年代半ばに、積極的な未来論を大胆に展開されたこの偉大な先達の勇気と慧眼に、あらためて深い敬意を表したいと思う。


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