国際A級ライダー  前田 淳


鈴鹿8時間耐久ロードレースリポート3
ブラックバードパワー炸裂せずも、見事完走!!
前田淳/坂田和人組 51位




 たんたんとLapをきざむ前田選手。チームは選手状況に合わせて、8Hoursを計算しながら、決して常識外のことはせず戦っていく。前田選手から坂田選手へ第一回目のライダーチェンジがそろそろだ。40分ぐらい経った頃、ピット内でモニターを見上げていた坂田選手が、ポロシャツ・短パンからレーシングスーツに着替えるべく、ピットの裏に消えていった。


転倒して帰ってきた
 しばらくした時、レースアナウンサーのみし奈さんの声がモニターからピット中に響く。「778番転倒!!」モニターには、倒れたマシンに小走りに駆け寄る前田選手の姿が写し出された。ハンドルに手をまわし、引き起こす前田選手。と同時にピットも慌ただしくなった。工具類を並べる者、ガスチャージャーをセットする者、心配そ うにピット内モニターを見上げる者。とその時、再度ヘアピンで転倒したとのアナウ ンス!!この時12:37。恐らく転倒時、オイルがもれて踏んでしまったのだろうと、近くの関係者。前田選手の戻りを今かと待ちわびるスタッフだが、彼とスーパーブラックバードがなかなか戻ってこない。
とても時間が長く感じる。そして弱々しく蛇足でピットレーンを滑り降りてくるスーパーブラックバードが見えてきた。あの力強いエキゾーストノートは全く聞こえない。
 スタッフの前に姿を現わしたスーパーブラックバードだが、その姿は痛々しい。鮮やかなブルーのカウルが所どころ破れ、白い何本もの大小のキズでカウルが傷つけられている。しかし、前田選手は大丈夫のようだ。藤井監督にヘルメットをかぶったまま状況を告げる。スタッフがカウルをはずし、修復作業の間も、そのまま スーパーブラックバードを見守る。

 前田選手はピットに戻り、椅子に腰を降ろした。 すかさずチームクリニックが駆け寄り、マッサージ。首部のほか、右手を痛めたよう だ。丹念に、丹念にマッサージを受け続けていた。
カウルはもちろん、シリンダーヘッドが取り外された。キャブレターも点検される。 マシンは生き物だ。ガソリンを吸い込み、エンジンで爆発を繰り返し、最後にマフラ ーから排気する。その吸い込む際に転倒時の砂・小石も一緒にをキャブレターから吸 い込んでしまうのだ。やはりここまでの作業となると、時間がかかる。交代に備えて レーシングスーツに着替えてピットにもどってきた坂田選手だったが、椅子に座って 腕組みをしたまま。鮮やかだったのはメカニック。何が悪く、どうしたら良いか、全 てを承知しているかのごとく、手際良く作業を進めていたことだ。かける声にも、ス タッフが素早く対応し、行動する。指定されたサイズのナットやボルトもネジの山か ら程内時間の中であっという間にみつけだし持っていく。


気づかう坂田
 そして、坂田選手が呼ばれる。セルスイッチをメカニックが押し、ブラックバード の咆哮が響く。一旦エンジンを切り、クイックチャージゃーでガソリン補給。再スタ ートの準備だ。しかし、ガソリンが大きくふきこぼれた。メカニックが再度セルスイ ッチをまわすが、エンジンがかからない。8時間という限られた時間の中、無常にも 刻々と時間が過ぎていく。坂田も眉間にしわを寄せ、厳しい顔だ。スタッフに促され 、坂田選手は一旦ピットに戻り、ヘルメットを取った。そしてしばらく立ちすくみ、 椅子に再び座った。レーシングスーツも上半身まで脱いでしまった。思いのほか時間 がかかるようだ。
懸命なスタッフの作業が続く中、前田選手はまだ首にタオルをあて られ、マッサージを受けている。再び、坂田選手に声がかかった。メカニックがセル スイッチをかけ、スロットルの開け閉めを繰り返す。スタッフ全員が、見守る中、今 度は確認するかのようにはれものから手を引くようなしぐさで、スロットルから手を 離す。

「ヨッシャ!!」1:13、スーパーブラックバードはメカニックによる修復で今度こ そ完全に息を吹き返した。 すばやくヘルメットをかぶった坂田選手が駆け寄り、またがったかと思うと同時に、 ほんの一言二言、監督と言葉を交しただけで、ピットを離れていった。転倒から40分 程経っていた。 スーパーブラックバードの順位はこの時66位。




[ これまでの前田淳選手の鈴鹿8時間耐久ロードレースでの戦績 ]
予戦 決勝備考
1989年13位リタイヤ8耐初出場もスタート時事故 に巻き込まれる
1990年 2位 8位 予選、日本人ペア最高位
1991年 25位 17位 7時間45分まで8位もパートナーが転倒
1992年43位 33位
1994年19位17位
1997年57位51位 レギュレーション外の車両のため、賞典外