「エンターテイメント」がビジネス成功の鍵


宮尾尊弘



 「シリウッド効果」で潤うアメリカのビジネス:

 情報技術が革命的に進むなかで、それをどうしたら広いマーケットにつなげ ることができるかがビジネスの勝敗を大きく左右する。
 その点で、アメリカ経済が元気なのは、もちろんインターネット・ビジネス のようにいわば技術の「川上」からビジネスの流れを変えている面があること はいうまでもない。しかし、それよりも「川下」の市場全体が、情報技術をう まく使って活性化している面が大きい。

 その典型が大衆芸能である映画産業の繁栄で、ハリウッドとシリコンバレー の協力による「シリウッド効果」が面白い映画を生み出し、国内外で巨額の利 益をあげている。それに群がる形で、他のビジネスも市場を拡大中である。  実際に、私がよく滞在するロスの郊外では、流行っているショッピング・セ ンターは例外なく多くの映画館を中核にすえて、何度も観にくるリピーターに モノを買ってもらおうとしている。

銀行のようなサービスも独立に店舗を構えるのはやめて、ショッピング・センター内でミニ出張所を開いて、顧客へのサービスに努めている。これらが相乗効果を発揮して、どの産業も高い利益を上げているのである。
 これが、映画のようなエンターテインメントを中核にして、川上の情報技術 と川下の市場全体を結び付けるアメリカ型ビジネスの典型例である。



 「タマゴッチ効果」で日本ビジネスの活性化を:

 エンターテインメントといえば、日本でも先日、マードック、ソフトバンク、 ソニー、フジテレビが衛星テレビで協力するとの合意があり、海外の動きがつ いに日本にまで押し寄せたようにみえる。しかし、問題は衛星テレビ自体がま だ日本ではマーケットとして成長していないことで、その将来の可能性もまだ はっきりしていない。

   それよりも、すでに大きく育っているエンターテインメントのヒット商品が あのタマゴッチで、いまや日本だけでなく、海外でも大ヒットしつつある。そ の成功の理由は、まさにエンターテインメントを中核として技術がうまく市場 に結び付いたからといえる。
 もともとバーチャル・ペットのアイデアは、アメリカのインターネット・ビ ジネスから来たもので、特に目新しいものではない。しかし、日本ではそれが ネット上ではなく、製品としてパッケージ化されて市場につながったことに注 目する必要がある。

 つまり日本では、(1)バーチャル・ペットのようなエンターテインメント を好む「コギャル層」はまだネット上の市場を形成していないので、製品にす る必要があったこと、および(2)日本の優秀な製造技術が、あれほど小さく 安い製品にすることを可能にして、大きな市場につなげたことが大きい。

 つまり、日本でもエンターテインメントを中核として、もともと強い製造技 術を介在させて先端的な情報技術と市場全体をつなぐならば、どのような産業 も再活性化する可能性がでてくる。実は、その先例が日本のゲーム産業にほか ならない。
 ちょうど映画がアメリカの異端産業から基幹産業になったように、ゲーム的 な要素が日本の異端でなく基幹になるときに、日本のビジネス全体が再び蘇る であろう。



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