「彼女の死に対する想い」

伊藤聡子

 5月16日、女優の可愛かずみさんが元恋人のヤクルト・川崎投手のマンションから身を投げ、自殺した。この衝撃的なニュースにマスコミは騒然となったが、私の第一印象は、「ああ、やっぱり悩んでいたんだな…」というものだった。というのは、川崎投手との交際が発覚した後、幸せそうな顔を見せたのは一回だけ。半年後ぐらいから、ワイドショーに登場する彼女の顔はどんどん変わっていったのだ。スタジオで「どうしたんだろうね…」と話しながら見ていると、ほどなく破局のニュースが伝わり、昨年末、新しい恋人とロスに旅行に出かける彼女をとらえた映像を見ても、幸せどころかその顔は更に暗くなっていったからだ。


 彼女が亡くなってしまった今となっては、本当の動機はわからない。ただ、いろんな事実を検証していくと、彼女の心の中には、やっぱり川崎投手しかいなかったと私は思う。


 まず、彼女の映像を全部洗い出してみると、指輪がその気持を全て言い表わしているような気がする。川崎投手との交際宣言のとき、結婚はまだ全然考えていないと言いながら、左手の薬指にはしっかりとプレゼントされた指輪が光っていた。しかし、婚約者の人とロスへ婚前旅行に出かける彼女は、中指にしか指輪をしていない。私も女である。左手の薬指がどれだけ大切なものかは理解できる。だとしたら彼女は誰のためにその指を空けておいたのだろう。


 更に、彼女は昨年の秋頃からホクロ、シミ除去のため美容外科に通っていた。しかし、婚約者から正式なプロポーズを受けた今年4月以降、ぱったりと姿を見せなくなったという。この事実をどうとらえるか。スーパーモーニングのVTRでは「結婚にむけて美しくなろうと準備をしていたが、プロポーズを受けたから、もうその必要はなくなった。こんなに幸せだったのに何故…」と分析していたが、私は違うと思う。確かに、女がそこまできれいになろうと思う時、必ず好きな人の存在があると思う。でもその相手が婚約者ならば、プロポーズ直後にやめたりしない。やめたのは、あきらめたからではなかったのか。彼女は手術が終わってきれいになると、その度、川崎投手に連絡をとっていた。彼女は本当は、川崎投手に見せたかったのではないだろうか…。


 彼女は、数年前から精神的に不安定な状態が続いていたという。彼女の感情の起伏の激しさについていけなくなり、川崎投手から離れていったとも伝えられた。スポーツ選手である彼にとってその選択は仕方なかったかもしれないし、それで彼を責めることはできない。でも、彼女にとっては、あの指輪からもわかるように、彼は自分の人生をかけた人だったんだと、私は思う。婚約者の人は、彼女のすべてを受け入れようとしたのだと思うし、彼女もそんな彼に自分を預けてみようと思ったのかもしれない。でも、いざ「結婚」が決まった時に、自分の本当の気持とのギャップに耐えられなくなったということは、十分考えられるような気がする。



 可愛かずみさんの死に関しては、今も連日のように番組のスタッフルームにいろんな情報が入ってくる。でも、根本的には、最後の場所として選んだところに、彼女の想いは行きつくような気がする。ただ厳然たる事実として、彼女の死は多くの人に深い傷を与えている。このことを、彼女は今、天国でどんな想いで見ているのだろうか…。