スーパーコラム番外編




小松和夫

(1)沖縄米兵駐留問題

 駐留米軍兵の不祥事、沖縄太田知事の国に対する直訴(代理捺印問題)、沖縄県民感情等について、今ここで言う事は差し控えます。
 もしこの問題で私なりにコメント出来るとすれば、次の通りになろうかと思います。
 今、東アジアを取り巻く環境、「暴動」「紛争」、「軍事的侵攻」を考え上げるとすると、北朝鮮の経済的破錠、釣魚台の領有問題、台湾の中国統一/独立問題、中国経済難民の流出、チベット及びシンチャンウイグル自治区の独立運動、南沙諸島の領有権問題等が上げられます。この内、日本に直接関係してくるものだけでも前4つを上げることが可能です。以下、その概略を説明すれば、
  1. 先に北朝鮮から韓国に亡命した元上級高官黄書記が韓国で陳述した内容が先頃新聞にも掲載されましたが、北朝鮮の金正日首席は、朝鮮統一問題に際して日本へのミサイル攻撃を真剣に考えていたようでしたし、事実、能登半島沖には1993年5月にミサイルが落ちている(発射実験)。また、日本での少女ら致事件もあった。 また、韓国への経済難民流出問題も大きくなりつつある状況とおもわれます。

  2. 釣魚台の問題では5月26日第3回香港台湾合同遠征隊による日本の海上保安庁とのバトルがあったばかりだ。過去、この問題で香港、台湾共日本の領事館等は過激分子に襲われております。中国政府は比較的冷静な対応をしておりますが、しかし、中国軍部を中心に民族国粋派は軍隊の出動強く政府に要請しているとも聞きます。

  3. 台湾にあっては、李登輝総統が新たに民主的選挙で選ばれ、(これ以前に軍事演習の名の基に中国は台湾沖にミサイル4発を撃ち込んだ) 今では議会を通して大統領なみの権限を持とうとすることにより台湾省から台湾国へと言う動きがあるし、また、台湾ではそれを望んでいる人々も決して少なくない。

    もっと言えば、「中国に統一されるぐらいなら日本の方がまだまし」と言う人々もいるようです。李登輝総統が母校である京都大学の同窓会に出席したくとも日本政府はビザも出さなかったようだが、もともと日本と台湾の経済交流の深さを考えれば、このまま中国と台湾の政治的対立がより鮮明になれば、米国は基より日本としても「関係ない事(よその国のこと)」と言えない立場になるだろうと考えます。

  4. 中国経済難民に日本流入。合法非合法を問わず、既に中国からの留学生及び就労者は日本にあって少なくとも20万人を越えているでしょう。問題は、「蛇頭」等による非合法入国者が後を絶たないことです。GDPで10%成長している国にあってなぜこのような現象が起こるのか、このテーマはまた別途扱いたいと思いますが、 今この場では、現在中国にいる人々の最大の関心事は「いかに海外に出て生活に糧(お金)を得るか」であると言って過言ではありません。

    従って、貧困の人(農業従事者、失業者)も、高校卒の普通の、大学卒の就労者も機会があれば、海外に出て金儲けをしたいと願っていると言うことです。既に中国沿岸部で数百万人の失業者が排出しており、内陸部の貧困層にあっては億の単位になるでしょう。沿岸都市の治安は日々悪化しておるようです。

 以上、このまま放置しておけば、「暴動」、「紛争」化するのは時間の問題でしょう。加えて、海外に居住する日本人も少なからず居る訳です。これらの危惧する事柄から防衛しようとすれば、沖縄駐留軍隊(米国第七艦隊)の必要性が十分あると言えます。特に抑止力としてなければならないマストな条件です。事実、この米国第七艦隊が日本を中心に存するが故に平静を装っているとも言えるでしょう。特に、地理的に沖縄と言う場所は昔も今も大変重要な戦略的拠点です。それだけに、沖縄における米国第七艦隊駐留部隊の存在は、日本及びアジアの安全保証に期待するところは大変大きいと言わざる得ないでしょう。



(2)釣魚台問題

 私は、香港の街を歩いていて、特にセントラルで、釣魚台問題が起こる度に「日本軍国主義粉砕」の文字をよく見掛けます。私はいつも違和感を持って観ております。 「今の日本のどこに軍国主義があるのだろう」と。日本の自衛隊の軍備はさぞ立派でハイテク電子戦に向いていることでしょうが、20万人たらずの隊員で、しかも国外に出られないとなれば、仮に香港で大変な暴動が起きたならば、いったい誰が香港在住の3万人近い日本人を救出すると言うのか? まったく日本の「危機管理」はなっておりません。

 先搬、第一回釣魚台遠征が行われ、香港の立法議員が水死しました。この時の民主党を中心とする日本領事館乱入は大変な報道ぶりで、この為、日本から来た観光客の一群は旅行社の指示により帰国してしまいました。もっとも、その事が報道されると 、今度はお金が香港に落ちなくなる為、抗議は一時的に鎮静化しました。

ともあれ、日本の場合、メキシコで起きた日本人人質事件といい、今回のペルー日本領事館人質事件といい、テロや暴動に対する危機管理の甘さを如実に現わしております。既に、脅しに弱い日本人/日本国の印象を世界に示している。それが、魚釣台の 3回に渡る遠征として現われてきているとも考えられます。従って、3回目も失敗に終ったようですが、4回目の遠征隊(デモ隊)も組織されることでしょう。もっとも、この問題に関して、今だ中国政府も台湾政府も大きくクレームを日本政府に突きつけているとも思えません。

むしろ台湾の農委会は台湾の遠征隊に対して24海里を越えたら違反の為、船の免許を剥奪すると言った程度です。中国政府や台湾政府は、この問題に関し、もっと日本を攻撃できる大義名分を捜している(日本が「ぼろ」を出す)ように思います。この「ぼろ」が出たとき、日本に対して経済的また政治的に共に自分達が有利になるように、すなわち、中国が台湾に対して、または台湾が中国に対して有利になるように日本を利用する事を画策しているようにも思えます。

しかし、それで日本が相当額のお金を払っても、釣魚台は自国のものと主張するでしょう。つまり、釣魚台が本当はどこの国に帰属するかは、取り合えず、どうでもよいのです。理由は、日本と20年、30年議論しても結論がでると思っていないし、また、 最初から自分のものと思っているからです。

それより、真面目で誠実な日本をこの問題に釘づけにし、何か「ぼろ」を出すのを待って、それを世界の世論に示し大義名分を勝ち取り、日本からの資金援助と別の問題について日本に見方になってもらう。すなわち、中国にとっても、台湾にとっても、最大の問題は台湾の中国統一か独立かと言う問題です。日本、米国、沖縄駐留米国第七艦隊をいかに見方につける、これが画策であり、日本が出すであろう「ぼろ」につけいることにあると思われます。

しかも、、釣魚台は最初から自分のものと考えており日本の領有を認めることはありません。
 現在、日本の海上保安庁の遠征隊(デモ隊)に対する人道的対応はまずは合格とは思いますが、「危機管理」はこうした相手の狙いや心理的作戦も理解しないと管理にならないでしょう。救出行動的なものに留まらないと言うことです。

 以上、2つの意味にて「危機管理」を述べたつもりです。