「財政の抜本的見直し」




中西真彦


 私はかねてから「政官民が一つとなって、今こそ勇断をもって構造改革にあたらな ければ、日本の明日はない」といって回っているが、今や制度の名に値しない財政投 融資制度に改革のメスをいれなければ、日本の明日はさらに暗くなるだろう。

 橋本首相の「財政投融資制度について抜本的な見直しをせよ」という指示で、大蔵 省の資金運用審議会(蔵相の諮問機関)に懇談会が設置され、いよいよ本格的な検討 が始まった。私もそのメンバーとして審議に参加しているが、常々喫緊の課題である ことを痛感する。

 財政投融資の予算は、一般会計の7割に匹敵する50兆円の規模に達し、運用残高は4 00兆円に膨らんでいるが、運用は大蔵省理財局資金運用部の手中にあるため、その実 態はきわめて不透明と言わざるを得ない。

 そこで、財投に対する抜本的見直しのキーワードをふたつ挙げたい。まず第一に、 マーケットメカニズムの導入である。郵便貯金の残高は200兆円を超えているにもか かわらず、マーケットメカニズムの外にあるという構図はあまりにもいびつであり、 金融ビックバンが騒がれている時代にそぐわないであろう。

 第二に、民間並のディスクロージャーの実施である。財投資金がわが国の社会資本 の充実に一定の役割を果たした事実は認めるが、しかしながら国民にとって重要な社 会資本整備に使われる財投予算が、国会の審議にすらかけられないという姿は正常で ない。財投システムのあるべきグランドデザインを描き、それに基づきどうあるべき かを徹底的に議論すべき時期にきている。それには財投の入口である郵便貯金の抜本 的見直しは避けられまい。

郵貯の自主運用を認め、民営化を前提に分割するのも一つ の方向だろう。そうなれば、特殊法人の存在自体も問われてくるわけであり、その心 臓部である理財局運用部の役割も自ずと変化せざるを得ないというわけである。

 日本は今、まさに分水嶺の上であり、良くなるか悪くなるかは、ここ3、4年の構造 改革のあり方いかんにかかっている。その改革の最もであることを改めて強調してお きたい。



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