依然として香港に蜃気楼を見る中国人




小松和夫


 私が、初めて香港を訪れたのは、今から15年以上も前で、当時の香港の人口は500 万人強と記憶しております。香港政庁は、80年10月まで、「タッチベース政策」と言う、中国人であれば例え非合法な入境でも香港に親族等(身元引き受け人)が居る場合は、難民を公民化し住居を認めてきました。 この政策が、70年代後半から80年代の香港の高度経済成長を支えてきたことは事実ですが、しかし、90年代に入り、産業構造が金融貿易中心になると、必然的に付加価値の高い人材が求められてくる、すなわち、専門知識、専門技術等を有する中国人で。逆に、これが香港人の職場を奪っていく状況も見逃せない事実ですが、ともあれ合的であれば問題ないと言えます。

 問題は、非合法的入境です。少なくなってきたとは言え、今までも週1回位は、TV や新聞で中国からの密入境を報道してます。しかし、返還を前にした最近は、「子供」(小人蛇)や「妊婦」の密入境者が急増しており、子供だけでも昨年の15倍で1,367人(1〜3月期)にのぼっております。
この背景は、香港の男性が中国に入り、もうけた子供達やその妊婦達です。現香港の 基本法では、「永久居民が香港以外でもうけた中国籍を持つ子女について永久居民になる資格を持つ」と規定しております。

香港の父と中国の子

 しかし、現在3万人以上の子女が中国側で待機しているとは言え、認知した上で許 可がおりるとしても、どのようなケースでも1日150人までと言う移民者制限が香港にはあります。加えて、深セン側政府職員は、貨物であれ、こうした申請であれ、また、新年のお年玉に至るまで、賄賂を要求する場合が多く、うまく捗りません。そこで、業を煮やした親達が数千ドルを払って、「蛇頭」等に斡旋を依頼し、不法に香港に呼び寄せるケースもあるようです。この背景には、「返還後の特赦で不法入境者は無罪放免になる」と言った噂があるようです。


蜃気楼のような香港
 大陸(中国)には、今でも何とか香港に出たいという欲求が強い。大陸(中国)の 状況は、改めて触れるとしても、今、返還により最も香港人が恐れるのは、中国経済難民の流入です。
 現在、香港では、以前にも増してよく北京語を耳にしますが、返還後の課題は、政 治、経済、技術的に国として必要である人がスムーズに受け入れられ、資格(上記規定)がある人が制限によりスムーズに入境出来ないとなれば問題であり、これをどう処理するかと言うことになります。


 そこで、香港政府は、各ケースごと数値表現化させ、得点の多い者(ケース)から 入境させていくと言う施策を考えています。中国に居る対象者が、配偶者か一親等か二親等か、若年者かどうか、等々により数値化させていく訳です。もちろん、香港に居る永久居民の職業や年収も審査参考となることでしょう。いずれにしましても、これはまだアイデアの段階です。法は守らねばなりませんが有益でない人は出来る だけ入境させたくないと言う、政府の二律背反的気持ちが分かるような気がします。
香港移民局タワー


参考までに附表1〜3を添付致します。

附表1は、本文でも述べました1日150人までの移民者制限の各形態別人数内訳を示しております。

(附表1)


附表2は、各々の場合の点数(「分」)を表示しています。点数が多い程、申請許可が早い訳です。下記は各々の場合の説明です。

  1. 夫婦の場合

  2. 香港人がまったく香港に身寄りがなく、中国にしかいない場合で、且、その中国の(子供)がその香港の老人の世話をする場合を言います

  3. 中国にいる老人で国内にまったく身寄りがない。しかし香港には親戚がいる。この香港の親戚を頼る場合

  4. 中国にいる子供で国内にまったく身寄りがいない。しかし、香港には親戚がいる。この香港の親戚を頼る場合

  5. 香港人の遺産を中国にいる肉親が相続する場合


(附表2)


附表3は一つの例を言っております。すなわち、香港にいる父親、母親とその子供(8歳)は中国人で、この夫婦は結婚して13年になり、今まで分かれ離れで生活していたとします。この母親と子供が一緒に香港に移民しようと申請した時。

(A)母親:13年x365日x0.1=474.5点
(B)子供:(15-8)+15=22点
(A)+(B)=496.5点

(附表3)



 この点数で申請し、後は待つしかありません。点数の多い順番から処理されていくことになります。
この制度(方式)は、まだ案の段階で議会を通過しておりません。