平等主義と自由主義のバランスを考える




中西真彦


 今年の春、自民党本部に我々が呼ばれたとき、ある議員が「あなた方は自由競争は いいと言うが、それは弱肉強食の論理で、自民党にはなじまない」とかみついてきた。
 そこで私は次のように説明した。
 「旧ソ連がなぜ崩壊したのかと言えば、つまるところ平等の理念だけをマグナカル タ(大憲章)にし、自由を全て追放したからであり、能力あるもの、働くものはそう でないものと同じ報酬でしかない。その結果労働意欲がなくなった。人間社会にとっ て必要なマグナカルタは平等だけでなく、自由だけでもない。つまり、両立主義なの である」と。

 昭和40年代半ば(1970年前後)頃までは両方のバランスがうまく取れていた 。しかしながら、その後、左足(平等)を前に出しすぎたのに、右足(自由)をバラ ンスよく出さなかったのである。たとえば、社会保障の面で現在、年金、福祉、医療 の財政が破綻しているのは何よりの証拠だ。
 左足を出しすぎた理由の一つは官が肥大化し、自己増殖したからだ。彼らの行政哲 学は、広くあまねく平等に予算をばらまくことを社会正義と考えているのだ。零細農 家をつぶさないために予算を全国にばらまく農水省、財政が左前になった地方自治体 に地方交付金を手厚く交付し、努力している自治体には一銭も出さない自治省。まさ に旧ソ連と同じである。

 それゆえに今するべきことは思い切った自由化である。具体的な一例として、日本 のコストを高くしている物流とエネルギーの問題がある。特に内航海運のコスト高は 驚くべきことだ。電気料金も日本産業の足を引っ張っている。米国の2倍である。ま ず、発電を自由化し、送電網をインフラとして自由に使わせる仕組みを検討する必要 がある。
 又、こうした我々の意見に対しての非難には、秩序の維持、協調、規制が必要だと いうのがあるが、全て自由競争が良いと言うわけではない。  この種の議論は時間軸を考えて議論しなければならない。20年後には今度は左足 を出さなければならないときもあるかもしれないからだ。  



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