中国という枠




孔健


香港返還は今世紀最後で最大の歴史ドラマだと言われる。そのドラマにおける最大の関心事は、香港が今までのような繁栄を維持できるかどうかということである。
 日本のマスコミは「一国二制度」を、まるで超法規的な制度のようなイメージで報道しているように見える。しかし、この制度はあくまで中国の法規内において有効であって、中国を超えることはあり得ない。

 また中英の返還に関する共同声明で「香港は今後五十年間、香港人による高度な自治で運営する」という項目をとらえ、香港と中国とは自ずと違うのだ、という見方を日本のマスコミはしているようにも見える。それは香港の民主派といわれる人達の主張でもある。

 そして、それは主張であり、希望であっても残念ながら現実ではない。現実は極めてシリアスであり、もっとドロドロしている。
 香港の民主派といわれる人達の主張も希望ももっともだとは思うが、香港がイギリス領から中国に変わるということは、国が変わるということだ。

 国が変わるのに、今まで通り何も変わらないということは、現実的にはあり得ない。
 「一国二制度」も「高度な自治」も中国という枠を超えることはできない。ただ、その枠を変えることは、長い時間を必要とするかもしれないが、できる。

 中国は深セン市など特別区を作ることでその枠を広げてきた。そういう意味において香港は中国の枠を変える可能性を持っていると思う。さらに重ねて言えば、そういう意味において民主派といわれる人達の主張と希望は決して無力ではない。