「島国的」発想からの脱却をー香港返還に際して




宮尾尊弘


 ロシアが西側に加わったことは、G7がG8になったことで明らかになった。 しかし中国も、香港返還によって西側に加わったことは、あまり認識されて いないのではないだろうか。
 特に日本では、このような大きな世界の流れが実感として伝わらない精神 構造があるようにみえる。ロシアについても、いまだに北方領土問題から日 露関係をみる「戦後」の発想から脱却していない。実際に、世界は「戦後」 が終り、「冷戦後」も終り、新しい西側の時代が始まっているのだ。

 中国についても、香港が中国の支配に下ったことだけが強調されているよ うであるが、実は中国の観点からすれば、曲がりなりにも一国二制度を採用 したことで、中国内部に資本主義制度を公式に認めたことになる。これは、 西側入りを表明したに等しい一大変化である。
 実際にも、香港返還によって中国の香港化が加速することは確実であり、 また香港ドルが米ドルにリンクしていることから、中国の金融市場が実質的 に米国当局によってコントロールされることになろう。

 このような新しい西側の時代が、左右から日本に押し寄せていることを悟 らずに、北方領土や香港といった島の状況から全体を論じる「島国的」な発 想のままでは、大局を見誤る危険がある。
 この新しい西側の時代が、単に米国一人勝ちの時代になるのか、日本が何らかの重要な役割を果たせるのか、それは日本が「島国的」な精神構造から 脱却できるかどうかにかかっている。このような根源的な問題を、毎日のよ うに歴史的な出来事が続くこの時期に皆でよく考えてみたいものである。



|スーパーコラムニスト一覧 バックナンバー インターネットスクープ
|うわさのインターネット 首都高速道路情報 MBホーム