構造改革は「構造」の改革であらねばならぬ
中西真彦


 橋本龍太郎総理によって六つの構造改革が叫ばれ、行政改革会議、財政構造改革会議、行政改革委員会など、さまざまな取り組みの舞台装置は設置されたが、問題はその検討の中身が真に「構造」の改革になっているかどうか。表面的な単なる組織の整理統合であり、看板の架け替えに終わってないか。あるいは痛みを避けて問題を先送りしただけにとどまってないか。国民はしっかりと擬視し、まぎれもなく「構造」の改革がなされているかどうかを見定めるべきである。たとえば財政構造改革においては構造改革といいながら公共事業やウルグアイランド対策費を含む農業関係費など、族議員の力強い項目については計画期間を先延ばししただけで事業の優先度や必要性の中身に立ち入ってない。これでは在来の「シーリング方式」とまったく変わらず、予算の支出の「構造」には切り込まれてなく問題を先送りしているだけだといわざるを得ない。

 さらには第2の予算といわれ、伏魔殿とも称されてきた財政投融資制度の改革には及び腰の気配がうかがえる。この問題は財政投資金の出口が特殊法人群であることから、行革に深く関わってくるし、この出口を改革すれば、同時に心臓部である大蔵省の資金運用部そのもののあり方が見直されなければならない。そしてそのことは資金の源資である郵貯、年金、簡保のうち、特におおきな郵貯をいかに扱うかという問題に突き当たらざるを得ない。
郵貯、郵政省をどうするかが今の行政改革の最終論点となる。
 郵貯問題は自民党にとってある意味で聖域でありタブーであろうが、避けては通れない道である。財政融資制度の改革をここで詳しく述べる紙幅はないが、ポイントを述べれば、巨大な運用銭を抱えているがゆえにその改革は段階的にやらざるを得ない。まず向こう3年程度の間に入り口、中間、出口を分断し、郵貯、簡保等については 定額建分と満期到来分は全額自主運用に移行させる。その先に民営化もみえてくる。 出口期間についても自主調達、自主運用に移行させるべきであろう。そして入り口、出口期間のそれぞれに民間の会計原則を適応し、ディスクロージャーを徹底させるのである。

 郵政省は「郵貯はユニバーサルサービスを果たすベーシックバンクだ」として必要であるという。また「民業の圧迫と民間金融機関は言うが、郵貯は国民が選んでいる権利だ」とも言う。が、しかしながら財投制度は市場経済の規律を弛緩させている。そのことはまだ将来世代への負担の付け回しであり、続けるべきことではない。金融システム改革、いわゆるビックバンとも不整合が明らかである。現行財投制度は、その内容がディスクローズされる「構造」の改革がされなければならない。まさに官の論理=左足が出過ぎてバランスを崩しているのであり、思い切って右足を前に出すべき時である。要は「構造」を改革して、効果的でかつディスクローズされたスモールガバメントを目指すことである。

 ここで強調しておきたい点がある。それは構造改革は総じて歳出削減等、デフレ効果をもたらし経済活動がシュリンクする結果、税収が落ち込むという悪循環に入る危険がある。 それを避けるためには思い切った規制緩和や、法人税・所得税の減税によって民間部門の投資を促進させることである。通産省はこの観点から法人税の10パーセントの実質大幅減税の必要性を打ち出した。いまやグローバル経済の時代に突入し、企業がくにを選択する時代であるとともに、資本が企業を選別する時代に入っている。大蔵省も歳入・歳出の単年度主義という足かせを外し、大型減税によって経済活力を引出し我が国の中長期の発展への道筋をつけるべきであろう。そのための減税財源の一つには、当然厳しいまったなしの地方自治体も含む政府関係機関のリストラが求められていることは言うまでもない。


   


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