新段階の米国ハイテクベンチャー--日本が学ぶべきもの
宮尾尊弘


 この夏の間、カリフォルニアに滞在しているが、このところ米国経済が絶好調なのは、やはりベンチャービジネスが大きな要因になっていることを実感する。
 特に、ここ西海岸では、インターネット、イントラネット、エクストラネットなどを応用したハイテクベンチャーが次々と生まれ、ベンチャーキャピタルやエンジェルの支援を求めて競争と協調に明け暮れている。
 その内容も、以前のように単なる技術的なアイデアを売り込む「コンセプト先行型」のベンチャーから、最近では実際の経営に直接役立つハイテクサービスを提供する「ソリューション・プロバイダー(問題解決)型」のベンチャーへと重点が移っている。それがさまざまな企業や産業に大きなプラスの影響を与えているようにみえる。

 例えば、各企業の経営上必要なソフトなどをできるだけ早く開発して(米国ではこの成果が3ヵ月単位で評価される!)、インターネットなどで配信するといったベンチャービジネスが成功している。そのために、あの天下のマイクロソフトでさえも、何年もかけて新しいビジネスソフトを開発するのではなく、企業のニーズに応じたバージョンアップをインターネットで配信する「ソリューション・プロバイダー」に変身しつつあるといえる。

 そのためか、米国版「フォーブス」の7月28日号に掲載された主要国の国別評価によれば、ベンチャーキャピタルをめぐる環境は過去5年間で、米国ではもともと良かったものがさらに大きく改善している。これに対して、日本ではもともと低かったものがさらに悪化しており、日米の差は開く一方である。

 実際に、日本では「ベンチャーキャピタル・ブーム」で、銀行から地方自治体までカネの出し手には事欠かなくなったようであるが、肝心の新しいベンチャー企業があまり 見当たらない。特に、ハイテクビジネスは、どうしても日本がこれまで得意としてきたモノづくりやパッケージづくりが先行するので、どうしても大企業主導になってしまい、市場の個々のニーズに素早く対応するサービスを提供するような新しいビジネスのアプローチは、なかなか生まれてこない。

 この際、個人も企業も金融機関も公的部門も、一度これまで得意としてきたモノ、ハード、カネ中心の発想をゼロベースで見直し、市場で顧客が何を望んでいるかを最新の情報通信技術を使って察知し、それに直接迅速に応える発想と態勢を構築する必要があるのではないだろうか。実際に、そうやろうとしている企業は、日本でも高い利益を上げえているようにみえる。
 それが、今一つ元気がでない日本が、絶好調の米国から学べる最も重要なポイントではないだろうか。


   


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