社会主義下の政治犯
孔健


 つい最近、日本人の友人からこんなことを言われた。
 「中国は共産党独裁による社会主義国だけど、おそらく唯一政治犯を処刑しな かった国だと思う。
中国以外の社会主義国では政治犯となった多くの人たちが処刑されている。ソ連 もそうだし、北朝鮮もそう、ルーマニア、東ドイツもそうだった。反体制、反逆罪という名において多くの人たちが粛正・処刑されてきた。

 しかし、中国は反体制ということで粛正をすることはあっても処刑することは なかった。文革においても、そして死刑と言い渡された例の江青を始めとする四人でさえ、処刑されたことはない。 それは、おそらく、中国共産党が、毛沢東、周恩来、トウ・小平という世界史におい ても第一級の人物たちによって指導されてきたということになるのではないか。唯一中国と同じなのはキューバかも知れない。 ここにはやはり世界史において第一級の人物という評価のあるカストロ首相が健 在だからだろう」
 その話しを聞いて、私は、なるほどそうした見方があるのかと思った。中国に おいて共産党下の 政治犯が処刑されないことはあたり前というより、現在の中国では考えようがな かったからである。

 もっとも、だからと言って今の中国で政治犯といわれる人たちが、先進国ほど 自由を保証されているわけはない。もし、社会主義下においても、政治犯という名の”犯罪者”が生まれないようになれば、つまり、どんな政府批判も保証されるようになれば、資本主義国よりも、さらに理想的な社会ができるかもしれない。そういう意味では、まだ中国はつらい現実を抱えている。