株価急落に対する見方の日米差
宮尾尊弘

 去る8月15日にニューヨークの株価が247ポイントも急落し、10年前のブラ ックマンデー以来最大の下げ幅を記録した。この株価急落に対する反応で、日米間の 差がかなり大きかったのが印象的であった。
 日本では、新聞などが「米国のバブル崩壊か」といった見出しで、好調だった景気 もそろそろ終りというニュアンスの取り扱いが目立った。それに対して、米国内では 景気は引き続きよく、単なる株価の「調整」にすぎず、それがスピード調整なのか、 調整期入りなのかが議論された程度である。
 この反応の差は、日本経済が90年から始まった株価暴落で大きな痛手をこうむっ たことから、ある意味で当然といえるかもしれない。しかし、しばしばいわれるよう に、「日本の常識は世界の非常識」の典型が、この「バブル」とその崩壊に対する反 応である。
 この点に関して、FORTUNE誌の8月18日号に興味深い記事が載っている。ロブ・ノートンによる「大恐慌の教訓」というコメンタリーで、それによれば「一部で根強い人気を保っているガルブレイス流の見方、つまりバブルは悪であり、バブル崩壊による大不況はその悪を取り除くために必要であるという見方は、歴史家の主張かもしれないが、多くのエコノミストの見方はそれとは違って、株価急落が不況をもたらす必然性はなく、不況は株価下落などに対する政策当局の誤った対応の結果起こるという意見が大勢」という。

 これに対して、日本では「バブルを作り、それに踊った不動産、建設、銀行、証券 の問題」が大きく取り上げられ、「バブル崩壊とその後の不況は当然の報い」という ガルブレイス的な見方が支配的である。政策当局の責任も指摘されるが、最近ではむ しろ不況対策を取りすぎて、財政赤字をたれ流した責任が問われる傾向にある。
 このために、日本から見るとニューヨークの株高はバブルそのもので、その崩壊と その結果としての不況がやがて来ることはほぼ確実と見られている。したがって、先 日のような株価の急落が起こると、「いよいよ始まった」という反応一色となる。
 これに対して、米国では基本的に経済の強さに対する自信に溢れており、注目され ているのはこの景気を政策当局が持続させる意志があるのかどうかということである 。連邦準備制度のグリーンスパン理事長の意向がいつも取り上げられるのは、このた めといえる。
 日本でも早く「バブル恐怖症」を克服して、米国のように株価や地価の上昇をその まま経済の強さの指標として自然に受け入れ、その急落の際には機敏に対応策を取っ て不況をもたらさないような手を当局が打つような経済システムを確立したいもので ある。



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