国際A級ライダー  前田 淳

〜日本人唯一のマン島T.T.チャレンジ編(2)〜

 いよいよ、マン島へ向かうにあたっては、とにかくあのマン島を走ると思うと、気分は既にライディングハイだった。しかし現実には・・・。

 当初、ホンダCBR1100XX(現在、世界最大出力のオートバイ。私自信も所有!)での出場を予定していたんだが、レギュレーションの関係でこれがボツ。1137ccのCBRに対してレギュレーションは1030ccまで。ホンダの場合はCBR900RRまでだ。

 今から思うとCBRで出場できなくて出鼻がくじかれたんだけども、なんとか出場したかった自分としては、残念な反面、しかし、あのコースを思い出すとホットするのも正直な気持ちやね。マシンはホンダから出たばかりの超レアなバイク、VTR1000Fを選んだんだ。5月上旬時点では、国内ではまだ誰もレースなんて走ってないし、ましてや自分は乗ってもいない! データーのデの字も無い訳で、今から考えるとよく選んだなあと思いまっせ! しかしこの文をワープロで打ちながら改めて思い直すと、スタート時点でこれがまたかなり無謀だったんだなあと思いますわ! まず乗ったことも無いオートバイを選んだ事。コースも当然知らない。何も調べずに一番速いクラスのTT-F1にエントリーした事。ほんまに知らぬが仏とはよく言ったもんだ。でもこの時点でとにかく行きたい! とにかく走りたい! って言うのが伝わってきませんか? 覚悟に勝る決断は無し。という言葉を信じつつ本格的な準備に入った。

 基本的にオートバイに関するデーターも無いので、マシンのチューニングはせず、ほぼノーマルで行こうと決定。コース自体覚えるまでは、あまりチューニングしても意味がないと思ったんだけど、これが結果的には良かった。
 改造点としては、まずホイール。マグネシューム製のホイールに変更して前後のバネ下の重量の軽減をはかった。そして、操縦性と走行性のスムーズさを考え、リヤショックをオーリンズに変更。最後が排気系、そうマフラーだ。出力パワーの効率と向上をねらい、JJ POWERの試作品を装着した。あと最後まで悩んだのがタイヤで、エントリーしたTT-F1クラスは当然レーシングスリック(溝無し)がOKなんだけれど、マシン自体がほぼノーマル。VTR1000F自体が、見た感じかなり剛性(外力に対し元の形を保とうとする力)面でかなり抜いて作ってある車だた思ったので、プロダクションタイヤ(溝付の普通のタイヤ)をチョイス。コースも公道なんで溝を付けて敬意を表した訳だ!(変にノーマルのバイクにスリックタイヤを履くとタイヤの剛性が勝ち過ぎて真っすぐ走らなくなってしまうことが多い。)

 でもバイクはイギリスで仕入れる事にしたので、結局日本から手荷物で持って行く事になったんだけど、これが重い! デカイ! タイヤが6set、その他ホイールやらなんやかんやで、全部で150Kgは軽くクリヤー! これでは空港で強盗に間違えられるんじゃないかと真剣に思った程。みなさん、バイクレーサーっていうとカッコイイ姿を想像してるでしょうけど、あえてワークスに反旗をひるがえすプライベーターっていうのは、こういう苦労は日常茶飯事なんです。しかし、拾う神アリ、今回色々お世話になった日本航空さんにオーバーチャージ無しのサポートを頂いたお陰で金銭的に、そして日本航空のみ駅からチェックインできたので、出発駅の京都で大量の荷物ともお別れすることが出来て、関西国際空港での引き回しの刑だけは避けられる事ができました。
日本航空さん! ありがとう! 海外行くなら日本航空!
しかし、まてよ、イギリスに着いてからの予定がこの時点で決まってない! のもそっちのけで我々マン島ご一行様は機上の人となりました。  

 



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