〜日本人唯一のマン島T.T.チャレンジ編〜その3




国際A級ライダー
前田淳



 飛行機の中からイギリスの街が初めて見えた印象は”赤い”感じがした。やはりレ ンガづくりの建物が多いからだろう。なんて感傷にひたる前についに来たって感じが したねー。イギリス本土でレースをする訳じゃないんだけど、思えば本当に遠くにき たなあと思ったね。ヒースロー空港に着陸した時の衝撃は今でも覚えているよね。な んか観光気分になってきたんだけど、それをぶち壊してくれたのが入国審査官。俺達 の他に日本人観光客も結構いたんだけど、俺を担当したのがハズレもハズレ!みんな が2〜5分程で審査をパスするのに俺だけ「50分!」そりゃ少し位人相は悪いかも しれないけど!?よっぽど疑わしかったんだろうね。FIMライセンス(世界共通の国 際競技ライセンス)を見せて審査をパスしたんだけど、レースにでるのか!なんて聞 いてきた時なんて下手に出場するって言って、外貨獲得の点で又もめそうだったんで 、応援にいく!ってごまかして正解だったけど、先が思いやられますわ。

運び屋の上をいく荷物をカーゴにこれでもかと積んだ、一目見て誰もが疑う怪しい 3人組はついにヒースローの外に出ることになった。そこでまず視界に飛び込んでき た事は、こっちに向いて手を振っている外人!いやこの場合こっちが外人か、なんと 通訳の浅田女史の友人ではないか!しかも彼はフォードのレンタカーも用意してくれ ている。アンラッキーが続いていたけど、初めてラッキー!とこの時思ったね。どう やら通訳の人が到着便の時刻を先に連絡してくれていたみたいで、こんなラッキーな 事になったみたい。そして車はマン島での愛機となるホンダVTR1000Fを受け取りに一路クロイドンに向かった。

 僅か一日で日本から持って行ったパーツを装着して、いよいよマン島に向けて出発する日がきた。イギリスの高速道路はフリーウェイでアベレージも高く、快適に走れる。日本みたいにいつまでも追い越し車線をトロトロ走っているおやじ車は皆無で、どのドライバーもすぐに譲ってくれるし、みんな本当にマナーが良い。みんながみんなレースをしている訳ではないが、こういうところからスピードに対しての順応性、及び適応能力がある国民だと思ったね。

ビートルズの故郷で有名なリバプールを過ぎると、そろそろフェリー乗り場のある ヘイシャムの町だ。フェリーターミナルの周辺となるとバイクの台数がみるみる増え てくる。このすべてがマン島に渡るんだと思うと改めて凄いと思ったね。コンペティ ター(レース出場者)と言うことを相手に伝えると優先的にフェリーに乗船できるこ とになり、空港の時といい、アクセスは信じられない程うまくいっている。こういう 所で運をあまり使いたくないんだけど、これくらいで使い切る運じゃないと自分を勇 気!づけて今度は船上の人となりました。

 船の中はほぼ全員ライダーという位、ライ ダーばっかりで、革ツナギの臭いでムンムン!船内ショップはさしずめマン島TT出張 ショップと言う位のTTグッズでいっぱいだった。これからレース観戦だと言うのにみ んな結構大量に買っていっていたなあ。つられてTシャツを一枚買って座席に戻った 時窓の向こうに見えたもの。マン島だ、マン島である。ついにたどり着いたぞーっ! いてもたってもいられずに甲板に出て風を感じながら感慨にふけろうと思ったら、そ こはただの酔っ払いライダーがトドの様にうごめいており、感慨にふけるスペースは 残されていなかった。みんな飲みすぎだよー!しかしこんな光景もよく考えればTTウ ィークが始まったんだと変な期待をした前田淳でありました。さあ!明日から走るぞ!



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