My Life
「郷に入れば、郷にけっこう従っている母子」
〜NO.2〜
ディップ・イン・ザ・プール ボーカル
甲田益也子

 東京では神経質に思われていないらしい私が(自分ではそう思っているのだが)驚くくらい大雑把が繰り広げられている。家の人は底抜けにワイルド(粗野)だ。

 子供の湿疹の敵がわんさかあって、悪いけどもうどうにでもなれという気になってしまう。「なんだかお前は可哀そうだ。」と母によく言われている名ばかりの猟犬の黒い毛、ほこり、いろんな虫、蜘蛛の巣。子供はハイハイ真っ盛りで、手をふいてもふいてもきりがない。
 当然、その手でかゆいところを掻いている。にこにこしながら汚いものを触っているのを見ると、毎回止めるのもしのびない。ほこりをかぶった強力殺虫剤をしっかり握っていた。蛍光色の浴用剤に手を入れる。母は「別府かどこかの湯の花って書いてあったから湿疹にいいはず」と言って、執拗に湯船に入れるように勧める。そんなに言うならと思って入れたら光るオレンジ色がわあっとひろがった。父親は掻きむしっている孫の首に「キンカンを塗ったらどうだ」と言っているらしい。
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