香港返還 直前・直後リポート
第一回 小松 和夫 |
この香港返還式典は、1997年における1番大きい世界の出来事と思われますし、今世紀にあたっても歴史的意義の大きい事に違いありません。それ故に、大変多くの報道陣が各国から集まって来ております。
中でも日本からのプレスが地元香港に続き2番目の多さと言うのには驚きます。 米国では、この香港返還を単に瞬時の大イベントとしてとらえる報道と言うよりは、人類が行った行為を歴史的にとらえて報道しようと言う試みが大きいと聞いておりますが、日本はいかがなものでしょうか? 最近、ある雑誌上で、日本の各メディアからその編集部に寄せられた質問内容を見ましたら、
等の質問があったそうです。もちろん、この雑誌の意図するところは、私の思いと寸分も違わないと思いますが、このようなレベルのチェックの為に日本にのマスコミがお金を使って香港に来る(そのような事はないと信じております)ようでは、それでは香港がかわいそうです。 しかし、最近の日本の世論調査で、「嫌いな国は?」に対し50%以上の人が「中国」と言ったと聞いています。私は少々ショックでしたが、アジアの時代と言われる中で良くも悪くも中国は話題の中心として座視されることは確かでしょう。よって、どうか買い物以外に香港を多面的に見て頂きたいと日本の若い方々に望みます。 中国では、北京、上海、広州でも香港返還熱烈大歓迎で、国民の大フィーバー振りがよく報道されています。もちろん、これには、中国政府を始め各中国の新聞が必要以上の報道振りをする事で愛国心運動を盛りたてていることは事実と思われますが、それ以上に、国営企業倒産等による失業者増大から生ずる不満を和らげようとする意図も感じられないではありません。しかし、ともあれ、中国では皆様が「おめでたい」と思っていることは確かで、素直に喜んでいるのではないでしょうか。多分、中国各地で、お祝いのお祭り騒ぎが開催される予定です。よって7月1日は中国全土で祭日となります。 しかし、一般人の香港への渡航は6月15日から7月15日まではその通行証発行中止。また、深セン及び珠海経済特区への立ち入り禁止としています。よって、制限付き(自由のない)熱烈大歓迎です。 英国は現パッテン総統は、6月30日午後11時50分に、既に来港している英国王室のヨットに乗り込み、午前0時ジャストに香港ハーバーから去って行くと言う、名誉ある撤退を演出して1世紀以上に渡る英国統治を終えます。もっとも、キャッセイ・パシフィック、中華電力、ホンコン・テレコム等香港の代表的英国企業は中国資本を受け入れ、今後大陸(中国)への足掛りを着々と固めております。よって株価も上がってきております。私は、今後、香港上海銀行がどのような動きをするのか注目しています。 皆様は小説で「龍の契り」(著者:服部真澄:元ジャーナリスト)、「香港回収工作」(著者:許家屯:元新華社香港支店長)と言う本をお読みになりましたでしょうか? あれほどまでに香港返還を嫌っていたサッチャー元英国首相が1984年に北京にて香港返還を意外とあっさり調印した(英中合意声明)。また、英国は、中華人民共和国誕生後、1950年には、自由主義社会でいち早く現共産党中国を承認している。はたまた、多くの香港企業が中国への返還に不安をあまり感じてないのはなぜか? また、なぜ北京詣でを頻繁にするのか?すべては陰謀と密約の中にあるのでしょうか? ある香港の方が、「1997年7月1日午前0時に粗野で野蛮な解放軍が香港と言う女神を犯しにくる」と言っておられたような気がします。もちろん、これは軍隊を嫌う人の例え話に過ぎません。 しかし、自由主義社会サイドからみれば、香港は資本主義社会とリンクしている訳ですから自国の利益の為にも香港を襲うようなことはないと思っていても、中国にしてみれば中国の利益である香港を守るのは当然と言うことになりましょう。でも「誰」の為に「誰」から守ろうとするのかがはっきりしないように思われます。香港人は、解放軍が大陸(中国)内でどのような略奪行為をしているかをよく聞き知っています。どうかくれぐれも香港在住民の為の解放軍であって欲しいと思います。 ここで、香港駐屯解放軍のサラリーの話題を挿入致します。 表2:香港駐屯解放軍のサラリー
もちろん、駐屯軍は、住居、食費、必要経費の心配はまったくありません。また、立場のある方々はサラリー以外の収入もあることでしょう。ただし、任期は一年のようです。 現在、行進軍は深センで練習中です。7月1日の午前0時に香港での行進を実行する為には、6月30日の夜中の内に香港に入港していなければなりません。中国政府としては、どうしても解放軍が香港の町を行進する映像が欲しいのです。世界に対し、また、中国国民に対してこれほどまでにセンセーショナルで刺激的な写真は他にないからです。そして、国民の愛国心を煽る訳です。1842年屈辱的な南京条約により香港島が割譲されて以来、その屈辱をはらす二度とないチャンスだからです。 英国(香港)は、この行進軍の入港を今まで認めておりませんでしたが、6月23日、これが認められまして、509名の解放軍が軽型武器を携えて6月30日9時、39車両にて来港することになりました。この内、146名が石岡軍営に、183名がボウ船州軍営に、78名が威両欺親王軍営に、102名が赤柱軍営に、それぞれ進駐します。 香港の一般庶民は、江沢民主席の名による「一国二制」、「港人治港」の懐柔報道により、無関心を装ってきた人も表面的には安心してきたようです。最近の世論調査では75%程の人々が不安を持たなくなったようです。また、中国系のデパートではすっかり歓迎を表わす飾り付けも終えてますが、しかし、祝典セレモニーに参加する人々(1万人)を除いて、中国のようなお祭り騒ぎをするような人は見掛けません。若者達は、6月28日から7月2日まで休みになった為、海外旅行に出掛ける人も少なくないようです。 620万人から居る香港人ですが、多かれ少なかれ、自分自身が、父母が、祖父母が、貧困により、天安門事件、文化大革命、共産党による国家成立等による恐怖と弾圧と財産没収により、言ってみれば、逃げてきた人々の集まりだからです。もっとも、最近は、中国の秘密警察、高級官僚、要人に至る多くの人が香港に来港している為、悪く言う訳にはいかないと言う状況もあります。しかし、祖国により統一されることは、決して悪いことではないはずです。だから、「回流港民」(一端外国に移住しても香港にまた戻ってきて働く人)も53%にも及びます。(仕事が見い出すことが難しかったと言う理由もあるが) 香港のビジネスマンは大変前向きです。香港返還を機にこれをビジネス・チャンスに継げようと一層中国へのパイプ作りに動いています。彼等にはまったく不安と言うものが感じられません。 |