マイクロソフト,企業用OSはWindowsNTに統一

 97年5月20日マイクロソフトはニューヨークにおいて、WindowsNTがエンタープライズシステム分野に参入するための「スケーラビリティ・デイ」と呼ぶイベントを開催した。
このイベントでは「WindowsNTエンタープライズ・エディション」を発表。これによって現在大型の凡用コンピューターや大型UNIXサーバーが席巻している大企業の全社的情報システム(エンタープライズシステム)に、WindowsNTを搭載したPCサーバーをもって参入する意向を、マイクロソフトは宣言したのである。

そして97年6月中旬、マイクロソフトのビル・ゲイツCEOは日米ほぼ同時に、ネットワーク環境にあるPCの所有コスト(TCO,Tokal Cast of ownership)を低減するための管理ソフト体系Zero Administratration Windows(ZAW)を発表した。
ZAWはWindowsNTの次期版5.0に包含される。WindowsNTとZAWによって構築されるネットワークのクライアント装置としては、拡張性を全くそぎ落とされた新しいPCモデル「NETPC」が使用される。

NETPCはオラクル、IBM、サンなどが発表している軽装備端末(Thin C Lient)であるNC(Network Computer)に対抗するため、インテル・マイクロソフトが共同で策定したPCの仕様である。
このようにエンタープライズ戦略、TCOの削減のZAWなどはすべてWindowsNT をベースとする。
ここにマイクロソフトの次世代OS戦略の具体例が見られた。
即ちマイクロソフトの次世代OSの役割は次のように整理できるのである。

WindowsCE 携帯端末、DVDプレーヤー、PCとTVの融合したPC/TVなどのマルチメディアコンソール用OS
Windows95系 次期版Windows9x(Memphis---開発コード名)を含めて、家庭用エンターテイメントPC用OS
WindowsNT ポータブル、デスクトップ、サーバーを含めたすべての企業用プラットホームOS

このようにビル・ゲイツCEOは、企業内情報機器にはすべてWindowsNTを搭載し 、企業情報システムのOS はNTに統合することを明確に打ち出したのである。このためNTは(98年以降) 次の4系列のOSに分岐すると予測される。
WindowsNTエンタープラズ
WindowsNTビジネス
SOHO(Small office and home office)
WindowsNTコンシューマ
マイクロソフトは企業用OSをWindowsNT1本に絞るのは、現在のWindows95が 、ネットワーク環境OSとしては多くの問題点を抱え、これを根本的に改善することが不可能であると判断するからである。

 さてわが国ではコンシューマPCはもとより、多くの企業がデスクトップOSとして Windows95を採用してしまった。一方米国の企業IS(インフォメーションシステム)部門は、デスクトップOSの32ビット化には極めて慎重で、企業内PCへのWindows95の導入率は極めて低い。そのため米国企業でWindowsを採用するところは、これからの32ビットOSとして、マイクロソフトのOS戦略を踏まえてNTへのマイグレーションは極めて容易である。
これに対して、国内PCベンダーの販売戦略にうまくのせられてしまい、大量のWindows95PCを導入してしまったわが国の企業は、再度NTへのマイグレーションという再投資を迫られるのである。これによってわが国企業のTCOは更に上昇するのだ。

 ゲイツCEOはWindowsNT初期版発表の当初より「ネットワーク環境のOSとしては、Windows95ではなくNTを選択すべきだ。NTは95に比して格段に高度な安全性を提供する」と述べていた。
 わが国のISはWindowsを大量に採用するならばPCベンダー の言い分ではなく、ゲイツCEOの主張を常に忠実に受け入れなければならない宿命を背負っているのだ。

 このような日米情報化投資対象の差は、どこから生まれてくるのであろうか。 これはわが国では、米国流通IT(インフォメーションテクノロジー) に関する重要な動向の情報が欠らくしているからだ。 わが国の大企業IS部内は、米国IT情報に常にダイレクト にアクセスする体制を整えなければならないのである。
シリコンバレーウォッチャー

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