慶大のスラッガー
高橋由伸選手只今、本塁打記録爆走中
第1回


(写真提供共同通信社)
 六月一日、神宮球場で開催された東京六大学野球`97年春季最終戦。 伝統の早慶戦に加え、慶大はこの日前日に続き連勝すれば9シーズン振りの優勝がかかった試合であったことと、まさに慶応大学スラッガーの高橋由伸選手にとっては本塁打記録をねらう最高の舞台が用意されていた。

早稲田が5点リードし迎えた5回表、味方の加点に続き高橋選手にこの日2度目の打席がまわってきた。 そしてこの打席、高橋選手のバットから放たれた乾いた打球音は一瞬の内に46,000人の歓声にかき消され、神宮の森に響きわたり、スタンドは大きく揺れた。
 この瞬間高橋選手が放った通算22本目の本塁打は田淵幸一選手(法大、現評論家)が29年前に打ち立てたリーグ本塁打記録に並んだ、

前日はバットを振ることさえままならない3四死球、そして優勝のかかった試合での 大量点差を一挙に追いつく同点打ということも重なってか、高橋選手は拳を突き上げ、何度も何度もガッツポーズ、体中に喜びをあらわしてベースを1周した。 得点のたびに早慶両校の校歌が交差する大熱戦の末、高橋選手の記録とともに慶大の優勝が決まった。高橋選手は現在4年生、これまでの大学野球生活でまだ優勝の経験はなかった。

「初めての優勝をなんとかつかみたい」
 試合前、高橋選手はこう言っていた。
 まだ、春のリーグ戦。これから秋のリーグ戦も残っている。このまま行けば、新記録樹立もまず確実なところだ。

 このところマイナーなスポーツになり下がっていた大学野球に、久々のスター誕生である。
 次回から高橋選手のパワーの秘密、スカウトの評価、プライベートライフなどを満載して連載するので、よろしく。



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