そして 最後尾には 万が一の
故障などに備えてピックアップ・トラックが付いて行くそうです。でも 先導さ
れて一列に並びゾロゾロとまとまって走る訳では在りません。朝のミーテイン
グで話し合ったルートに沿って 其々が地図を片手に自分の位置を確認しなが
ら 何マイルで何時間走行すれば何マイル先へ進むかを計算し、各自の責任にお
いて走るそうです。このハーレーの旅の基本は“先導車にはついて行かない”
“他人を当てにしない”“自分の旅は自分でクリエートする”だそうです。途中、
迷子のバイカーが出る事だって在るでしょう。毎日毎日がドラマなんです。そ
して 毎晩、其々の健闘と無事をたたえ、一緒にビールを呑み、語る。そんな中
から 日常生活では味わえない絆が参加者の中に築き上げられ 一種「戦友」の
様なつながりが生まれるそうです。
木村さん曰く「出発前は 参加者同志 互いに他人行儀で 何となくギクシャクし
ているけれど 3000マイルもの大陸横断の旅の途中には 考えもつかないハ
プニングやアクシデントが起こるんです。でも うちのクルー(スタッフ)は 参
加者自身がどうしても手に負えない最悪の事態に陥った時にしか 手を差し延
べない事にしています。ですから 参加者同志で互いに助け合わなければなりま
せん。サンダー・ストームに見舞われ、時には氷混じりの雨に打たれ、殴り付
ける太陽の日差しに焼かれ、ドライヤーの様な熱風にさらされる事も在ります。
バイクが故障して道端で止ってしまう参加者も出ます。
そんな時、私達は少し距離を置いて そっと見ています。すると それに気が付いた参加者(仲間)が 重量300キロ以上もあるハーレーを皆で押して 何とかエンジンをかけ 先へ進もうと“押し駆け”をするんです。そんなこんなで やっとその日の宿に辿り着
きます。勿論、ヒルトンの様な至れり尽くせりのホテルではありません。アメ
リカを旅するには やはりモーテルです。到着後には 後方からサポートしてい
たトラックが“バー”に早変わりして 参加者の喉を癒します。もうそこには ス
タッフとか 参加者同志の昨日まで知らなかった“他人”と言う隔たりとかは無
くなっているんですね。皆で酒を呑みながら、“会社を辞めてまで このツアー
に参加しようと心に決めたいきさつ”や “将来の夢”等、 焚き火を囲んで語
り合います。空には 天の川が地平線から地平線まで流れ、遠くにコヨーテの鳴
き声が聞こえます。大陸横断と言う同じ目的を持った“仲間”が集まり、互い
に助け合い、様々なハプニングを乗り越えながら 夢を形にして行きます。そし
て 言葉では決して言い表す事の出来ない大切な“何か”を心に秘め、皆 日本
へ帰国します。」
木村さんのお話を伺っていると 何だかハーレーで旅をしているような錯覚に
陥りますね。そんな仲間が サンタモニカの海岸に着いたときには「ヤッタゾ
ー!」っと叫んで 服を着たまま海に飛び込んでいくそうです。ひとつの目的に
向かって 皆が一緒になって集い、それが成し遂げられた時の感動。体の中から
込み上げる物が そうせずにはいられなく させるのでしょう。
このバイクの旅は 心と体の「体験旅行」なのかも知れません。
次週に続く
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