<イッパツイキマッセ!>

「何とか6位まで入れば良いって言ってたのに。昨日になったら、監督がイケーッっ て・・・。」 ピット裏に多少こわばった笑顔で姿を現わした彼の第一声がマンガチックで笑ってし まった。 今回の2時間耐久ロードレースでは、6位までに入りさえすれば、8耐の決勝に進めら れるが、マシンの仕上がり具合はもちろんのこと、スタッフも準備に全力を尽くして きた裏付けからか、チーム全体の雰囲気がトップでの通過を確信していたようであった。
「何か、だんだん緊張して来ましたワ!」数日前の電話でも冗談まじりの彼だったが 、いつもサービス精神100点満点の彼のこと。本心が計り知れないことも度々あった ので、そう見えたのかも知れない。
しかし、そこは「仕事人」。「イッパツ、いきまっせ」という京都育ちの彼らしい表 現に今日のレースへの意気込みも同時に感じられた。
 そして、9:01.35、全24台のマシンが走行しながらのローリングスタート方式で スタート。耐久レースは2人1組となり交代で乗る。FCCは第1ライダーの小西選手 がスタート。前田選手は第2ライダーだったので出番は40分後の予定だ。スタート 間もなく、ピットでの前田選手はいつも電話の向こうから聞こえてくる陽気な彼では なく、ヒキシマッタ顔で目元キリリと落ち着き払った「仕事人」の顔をのぞかせてい た。しかし、しばらくしてブラックバードが1〜2位を繰り返す快調な展開もあって か、前田選手も時にスタッフと談笑する余裕も見られた。
 そこへ、レースも序盤に1台のマシンにアクシデントの情報。どうやらコース上に オイルも流れているらしい。レースを危険回避するためコースにペースカーも入り、 コースマーシャルが黄旗をふる。そしてレースを先頭グループで主導していたマシン 数台がレース続行を危険と判断してかピットに入ってくる。この中に小西選手も交っ ていた。あわてて駆け寄るスタッフ。小西選手は先頭グループを形成する他のライダ ーとバイクにまたがったまま、情報を交す。前田選手も割り入り状況を把握する。そ してしばらくして再びピットからブラックバードは飛び出して行ったが、この間、他 のマシンは周回を重ねていて、我がFCCのブラックバードは先頭から3Lap遅れていた。

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